生前贈与とは
こんにちは!年間200件以上の相続税申告を手掛ける税理士法人ともに代表社員税理士の入江です。
この記事では「生前贈与」について解説します。税金や相続に関心があるなら、「生前贈与」という言葉を、お聞きになったことがあるのではないでしょうか。とはいえ、具体的にどんな内容であるかご理解されていない方も多いです。
そこでこの記事では生前贈与の仕組みややり方、メリットについてわかりやすく解説します。生前贈与には多くの利点がありますが、注意が必要な面もあります。こうしたデメリットについても、メリットとあわせて早めに知って欲しいです。「生前贈与について知りたい」方は、今すぐにお読みください。
この記事を読むとわかること
- 生前贈与の仕組み
- 生前贈与のやり方
- 生前贈与の注意点
- 生前贈与制度変更の可能性
記事監修:税理士法人ともに 代表社員税理士 入江
1.生前贈与とは
生前贈与(せいぜんぞうよ)とは、誰かが誰かに生きているうちに財産を渡す(贈る)ことです。日常よくある行為ですが、話題になる理由は相続対策で使われることが多いから。また、贈与により財産をもらった人には税金がかかります。このときにかかる税金が贈与税です。
国税庁では、生前贈与にかかる贈与税について次のように定義しています。
贈与税とは
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。
ただし、すべての贈与に課税されるわけではなく、条件によって非課税となることもあります。生前贈与が話題になり注目される理由は、この「非課税」枠にあると言えるでしょう。
2.生前贈与のメリットと注目される理由
多くの人が生前贈与を利用する目的は、なるべく税金を払わずに所有する財産を誰かに渡したいと考えるからです。
生前贈与をすることで、贈与を活用せずに相続する場合より税金が少なくなることを期待しているのです。このように考える理由は、贈与には2つの非課税の枠があるからです。つまり、生前贈与のメリットは「非課税枠」にあります。
つづいて、生前贈与の種類と非課税になる制度について解説します。
3.生前贈与の種類
生前贈与の制度には、2つの種類があります。生前贈与をするなら、どちらの制度を使うかを選ばなければなりません。
3-1.生前贈与の制度1 暦年課税
生前贈与の制度の1つは「暦年課税」です。暦年課税とは、ある年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された金額に応じて贈与税を課税する制度です。
注目点は、贈与金額が少ないと贈与税が課されず非課税になることです。この理由は、1人あたり年間110万円の「基礎控除」があるからです。つまり1年間に贈与された金額が110万円以下であれば、贈与税の申告が不要で、結果として非課税となるわけです。これが暦年課税の『非課税枠』です。
3-2.課税制度2 相続時精算課税
もう1つの生前贈与の制度は「相続時精算課税」制度です。相続時精算課税制度とは、贈与した時点では課税が発生せず、後に相続が発生したときに他の相続財産と合わせて相続税として課税される制度です。相続時精算課税制度の特別控除は2,500万円となっています。
このように贈与税の制度には、暦年課税と相続時精算課税制度の2種類があります。しかし利用する場合は、どちらか一方しか使うことができません。
一般的に利用者が多いのは暦年課税の方です。2019年のデータでは、暦年課税件数44万件に対して相続時精算課税は4万件と、利用者数に大きく差が開いています。
やや不人気である理由は、以下のように相続時精算課税制度に少し使いづらい面があるからかもしれません。相続時精算課税制度は利用前に申請が必要で、利用できる人にも条件があります。いったん相続時精算課税制度を利用し始めると暦年課税は選べません。
つづいて生前贈与の実行方法を解説します。利用者が圧倒的に多い暦年課税を使った手法で解説します。
4.生前贈与をする方法(暦年課税活用)
暦年課税を活用する生前贈与の方法を解説します。ここで暦年課税について、あらためて確認しましょう。
暦年課税
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
ポイントは「1年間に贈与する金額が110万円以下なら非課税」ということでした。この制度をもとにすれば、「毎年」「110万円以下を」「非課税で」コツコツ贈与し、税金を節約しよう…と考えてしまいがちです。
しかしこうした自己流のコツコツ暦年贈与はおすすめできません。後に高額の贈与税が課せられる可能性があります。
どうしてですか?困ります!なぜそんなことに?
なぜ自己流のコツコツ暦年贈与が問題なのか、次で詳しく解説します。
5.コツコツ暦年贈与のデメリットと注意点
コツコツ暦年贈与のデメリットと注意点は以下の3点です。
5-1.定期贈与と見なされて課税される
コツコツ暦年贈与が問題になるのは「定期贈与」と見なされて贈与税がかかることです。定期贈与とは「まとまった金額を贈与する意図があり、その金額を分割し、毎年定期的に贈与していくこと」を指します。年をまたぎ、続けて暦年贈与をしていると、この定期贈与と見なされ高額の税金を課せられる可能性があるのです。
5-2.死亡前3年以内の贈与が相続財産に含められて課税される
贈与した人が死去する時期によっては、非課税で暦年贈与したつもりの贈与に相続税が課される可能性があります。相続税の規定で「被相続人が死亡して相続が始まる時点の3年前までに贈与した財産については相続財産と見なす」というものがあります。つまり、被相続人が死亡する3年前までに暦年贈与した財産については、相続が始まると暦年贈与の非課税が適用されないのです。他の財産とまとめて相続税が課される可能性があります。
5-3.名義預金とみなされて課税される
暦年贈与したものが「名義預金」とみなされ、課税される可能性もあります。名義預金とは「預金口座の名義人とその預金を実際に作った人が同一ではない」預金のことです。
贈与に使った預金口座が以下のような状態ですと、名義預金とみなされる可能性があります。
- 贈与した人が贈与先の預金口座の通帳と印鑑の管理をしていた
- 贈与を受ける側の口座の登録印鑑が口座名義人のものではなかった
なんだか暦年贈与を使った生前贈与は難しそうですね。
少し心配になりますが、ちょっとしたコツを知っていれば意図しない課税を避けることができるでしょう。つづいて失敗しない暦年贈与のコツをお伝えします。
6.暦年贈与のコツ
暦年贈与を使った生前贈与が定期贈与とみなされるリスクを、なるべく小さくする方法をお伝えします。
6-2.暦年贈与のコツ1:贈与契約書を結ぶ
暦年贈与が定期贈与とみなされるのを避けるには、贈与のたびに贈与契約書を結ぶという方法があります。単年度つまり1年ごとの贈与の契約書を作るのです。確実を期すなら契約書を公正証書にしておくのがよいでしょう。費用と手間はかかりますが契約書が公式な書類として扱われます。
6-3.暦年贈与のコツ2:基礎控除枠以上に贈与する
暦年贈与2つめのコツは、基礎控除の範囲を超えて贈与する方法です。暦年贈与の基礎控除は年間110万円以内ですが、この枠以上に贈与して贈与税を納税します。非課税の枠を超えて納税する理由は、納税証明書を発行してもらえるから。納税証明は贈与の証拠となり、定期贈与とみなされるリスクを軽減できます。
6-4.暦年贈与のコツ3:贈与のタイミングをずらす
暦年贈与3つめのコツは、贈与のタイミングを一定にしないことです。毎年同じ時期に、同じ金額の入金があれば、その入金は計画的な贈与とみなされる可能性があります。このリスクを避けるには、贈与の時期や金額に変化をつけることです。
このように暦年贈与にはいくつかのコツがあります。暦年贈与の制度は近い将来、変更される可能性があります。また廃止される可能性もゼロではありません。制度変更や廃止の可能性も念頭に置いておきましょう。
7.生前贈与の制度が変更になる?
前項で書きましたが、生前贈与で使うことができる暦年贈与の非課税110万円は廃止される可能性があります。
その予測の理由は、『税制改革大綱』という公式文書の中に、「廃止に向かう」と受け取れる内容の記載があるからです。
以下の文章が、「令和4年度税制改正大綱」に記載されている、その判断の元となった箇所です。
今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す
出典引用:令和4年度税制改正大綱
「暦年課税制度のあり方を見直す」と書かれています。
税制改正大綱は、我が国の税制の方針を示すもので、その文書に「暦年課税制度のあり方を見直す」と記載されたということは、近いうちに必ず何らかの変革があると見てよいでしょう。
以上のように、生前贈与の制度は法律改定で変更されたり、廃止されたりする可能性があります。また贈与税が相続税と一体化される可能性もあるのです。
8.生前贈与を行う方がよいのか?相続専門税理士の見解
生前贈与の制度があるうちに贈与した方がよいのでしょうか?結論から言いますと、あわてて生前贈与するのはおすすめできません。といいますのは、多くのケースで、相続税の税負担は贈与税より低めだからです。詳しくはこちらの「贈与税と相続税を徹底比較」の記事をお読みください。
どうしても贈与にチャレンジしたいと考えている場合でも、自己流で進めるよりいったん立ち止まって専門家にご相談されることをおすすめします。相談料などの費用がかかっても、最終的にはメリットが大きいです。
9.まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。生前贈与の仕組みと種類や暦年贈与による生前贈与のコツをお伝えしました。万全を期して生前贈与を始めたいとお考えでしたら自己流でスタートする前にぜひ専門家にご相談ください。税理士法人ともにでは生前贈与について個別でアドバイスを行っております。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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