準確定申告とは
準確定申告は、相続の時に行う確定申告です。
通常の確定申告よりも多くの書類を必要としたり申告期限が異なっていたりするので注意が必要です。
何度も経験することではないので「やったことがないから心配」「何から始めればいいのか分からない」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、税金と相続のプロである相続専門の税理士が監修し、準確定申告が必要になるケースや手続きの流れおよび注意点を詳しくお伝えします。
分かりやすく解説しますのでぜひ最後まで読んでください
準確定申告とは?
準確定申告とは、相続人等が被相続人に代わって確定申告をすることです。
確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの間の所得を計算し、翌年の申告期限(通常は3月15日)までに済ませる必要があります。しかし年の途中で亡くなった人は申告ができません。そこで、亡くなった人の相続人等が、代わりに申告・納税する必要があります。これを準確定申告と呼びます。
参考:国税庁タックスアンサーNO.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
被相続人が1月1日から申告期限までの間に、確定申告をせずに亡くなった場合、相続人等は前年分と本年分の両方を準確定申告します。
例えば被相続人が2020年2月1日に亡くなった場合、相続人等は前年分(2019年分)と本年分(2020年1月1日から2月1日まで)の2年分の準確定申告をしなくてはなりません。また準確定申告は通常の確定申告とは期日が異なりますので、ご注意ください。
準確定申告と確定申告はどう違うか
準確定申告と確定申告の異なる点は2つあります。
1点目は申告者です。確定申告は納税者本人が行うのに対して、準確定申告は納税者の相続人等が行います。
2点目は申告期限です。確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までと決められています。一方で準確定申告は、相続人等が自分に相続があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告しなくてはなりません。例えば、5月15日に相続があることを知った場合、準確定申告の期日は9月15日となります。
このように、準確定申告と通常の確定申告は、2つの点で違いがあります。
準確定申告はどういう時に必要か
準確定申告が必要になる場合は、通常の確定申告と同じです。準確定申告が必要かどうか知るためには、亡くなった人に確定申告義務があったかどうかを確かめます。相続人は被相続人の預金通帳などを見て、どのような所得がどれほどあったのかを調べましょう。準確定申告が必要なケース、した方がよいケース、不要なケースの3つにわけて解説します。
準確定申告が必要なケース
一般的には、被相続人が以下のいずれかに当てはまる時、相続人等が準確定申告する必要があります。(条件により一部例外あり)
- 個人で事業をしていた場合
- 不動産を賃貸していた場合
- 以下のような、一定額以上の収入があった場合
→給与が2,000万円を超えている
→年金が400万円を超えている
→その他副収入(必要経費等控除後)が20万円を超えている - 同族会社の役員やその親族で会社から利子や賃料を受け取っていた場合
また、普段とは異なる特別な所得があった場合も準確定申告が必要です。例えば、以下のようなケースがあります。
- 生命保険などの満期金、一時金があった場合
- 土地や建物を売却していた場合
- 株式を売却した場合(源泉徴収されていない場合)
準確定申告をした方がよいケース
以下のようなケースでは、還付金が戻る可能性があるので、準確定申告をした方がよいでしょう。還付金がもらえるかどうかを確認し、もらえるようなら準確定申告をするのがオススメです。
- 個人事業や不動産を保有していた被相続人が生前に予定納税をしていた場合
- 給与所得や雑所得などで被相続人が源泉徴収されていた場合
- 医療費控除をしていた場合
不要なケース
被相続人の中で、相続放棄した人は準確定申告をする必要はありません。
準確定申告の手続きについて
準確定申告の手続きは、通常の確定申告と大きな違いはありません。しかし、申告者や申告期限は異なります。また、申告場所と必要な書類も違いがありますので、注意が必要です。詳しく解説します。
手続きの流れ
準確定申告の手続きの流れは、以下の通りです。
- 1.準確定申告が必要かどうかを確認する
- 2.申告期限を確認する
- 3.準確定申告に必要な書類などを用意する
- 4.相続人が2人以上の場合は、各々に連絡を取り、署名・押印をもらう
- 5.申告期限までに申告書を出す
以下、詳しく解説します。
申告者は誰か
申告者は相続人もしくは包括受遺者です。包括受遺者とは、「私の全財産を○○に遺贈する」もしくは「私の財産の3割を○○に遺贈する」といったように、財産の内容を特定せずに全てもしくは一定の割合などで遺産相続を受けた者を指します。包括受遺者が法人であった場合は、申告者に該当しません。相続人や包括受遺者が2人以上いる場合、全員が申告対象者となります。
申告場所はどこか
申告場所は、亡くなった方が住んでいた地域を管轄する税務署です。通常の確定申告の申告場所は、申告者が住む地域の税務署になります。一方で、準確定申告は被相続人の代理で申告をするものなので、生前の居住地域の税務署に申告します。
いつまでに申告するのか
申告期限は、相続があったことを知った日の翌日から4か月後です。もし1月1日から申告期限日までの間に、被相続人が確定申告せずに亡くなった場合、その前年分と本年分の2年分の申告を同時に行います。
必要な書類について
準確定申告に必要な書類は、確定申告の場合と同様です。それに加えて、用意すべき書類が何点かあります。
1.準確定申告書
一般の確定申告書と同じ用紙を使用します。用紙の一番上に記載されている「確定申告書」という言葉に「準」を書き足し、準確定申告書であるとわかるようにします。
2.確定申告書付表
各相続人等の氏名・住所・被相続人との続柄・相続分・相続財産の価値・納める税額などを記載した書類です。
3.収支内訳書もしくは青色申告決算書
亡くなった人が個人事業主だったり、不動産所得があったりした場合は、収支内訳書もしくは青色申告決算書も作成します。
4.委任状
準確定申告に係る還付金を、相続人等の代表者が一括で受け取る場合に必要になる書類です。確定申告書付表と一緒に提出します。
以上4点は、税務署所定の書類です。その他、税額の計算に必要になる書類を用意します。具体的には以下の通りです。こちらも合わせて用意をしておきましょう。
- 給与や年金の源泉徴収票
- 医療費控除に必要な領収書
- 生命保険などの控除証明書
準確定申告の注意点
準確定申告には、通常の確定申告と異なる点がいくつかあります。具体的には、手続きの方法や納める税額などが異なるケースもあるので、注意が必要です。
準確定申告は相続人等全員で行わなくてはならない
準確定申告の書類には、相続放棄した人以外の全員の連署が必要です。相続人等が3人以上いる場合、全員に連署してもらうのに時間がかかることも想定されます。そのため、申告書類の作成は早めに始めるのがオススメです。
所得控除できるのは被相続人の生前に支払った金額のみ
生命保険料や地震保険料、医療費などを控除できるのは、被相続人が亡くなった日より前に支払われた分に限ります。
例えば被相続人の死亡後、代わりに相続人等が病院で支払った医療費は、控除の対象になりません。一方で、被相続人が生前に支払っていた医療費や保険料などは、控除の対象です。なお、亡くなった後に支払った金額は所得税ではなく、相続税の控除の対象なので、ご注意ください。それぞれの支払日を確認し、所得控除の対象になるものと、そうでないものを事前に把握しておきましょう。
還付金の受け取り方と税金について
確定申告をすれば、所得税が還付されることがあります。還付の理由は、本来納めるべき税額と、実際に納めた税額に差が生じたからです。つまり余分に税金を納めていた場合、払いすぎた税金を還付金として受け取ることができます。
例えば、還付金の受け取りには以下のようなケースがあります。
- 給与所得や公的年金による雑所得の受け取りに対して源泉徴収されていた場合
- 事業などをしている人が予定納税をしていた場合
還付金が受け取れるのは準確定申告の場合も同じです。被相続人が生前に所得税を納め過ぎていた場合、相続人等は還付金を受け取れます。
相続人等が一括で還付金を受け取るには、準確定申告時に委任状を提出しなくてはなりません。一方で、相続人全員が法定割合で還付金を受け取る場合、委任状は不要です。
また、還付金には相続税が課せられます。相続税が課せられる理由は、還付金請求権を有しているのが、相続人等ではなく被相続人だと考えられるからです。相続人等は、被相続人から還付金請求権を相続したと捉えられます。したがって、相続人等が還付金請求の権利を行使して得た還付金には、相続税が課せられます。
青色申告は引き継がれない
被相続人が事業をしていた場合などに、相続人等が事業を引き継ぐケースもありますが、そのままでは青色申告は引き継がれません。相続人等は納税地の所轄税務署長に、青色申告承認申請書を提出する必要があります。
なお、青色申告承認申請書の提出期限は、被相続人の死亡日によって異なります。期限は以下の通りです。
- 死亡日がその年の1月1日~8月31日の場合:死亡の日から4か月以内
- 死亡日がその年9月1日~10月31日の場合:その年の12月31日まで
- 死亡日がその年11月1日~12月31日の場合:翌年の2月15日まで
準確定申告をしなかった場合の罰則は?
義務があるにもかかわらず準確定申告をしなかった場合、余計に税金を課せられる危険があります。そのため、申告期限までに準確定申告を済ませましょう。
附帯税などが発生する
納めるべき税金を納めなかった場合、追加で税金を納める義務が生じるケースがあるため、注意が必要です。具体的に課税される2種類の税金をご紹介します。
1つ目は延滞税です。期日までに税金を納めなかった場合に課せられます。納める予定日から、実際に納めるまでの期間に利息が付けられます。
2つ目は加算税です。罰則の目的で課せられ、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税の4つに分類されます。
加算税の名称 | 課税要件 |
---|---|
過少申告加算税 | 期限内に申告はあったものの、納めるべき税金が少なかった場合 |
無申告加算税 | 期限内に申告がなく、納めるべき税金を納めなかった場合 |
不納付加算税 | 源泉徴収した国税を期限内に納めなかった場合 |
重加算税 | 税務調査時に嘘をついたり、取引記録を偽装したり意図的に脱税した場合 |
このように、納めるべき税金を期日までに納めなかった場合、余計な納税義務が生じるのです。そのため相続人等は、被相続人の代わりに納める税額だけではなく、自身が納める相続税額も明確にする必要があります。
新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限は延長される?
国税庁は新型コロナウイルス感染症の影響を考え、確定申告の期限を延長する措置を取っています。期限延長の理由は、感染拡大を防ぐために外出を控えるなどをして、確定申告するのが困難な方が大勢いると考えられるためです。期限を延長するための申し込みは必要ありません。
申告期限延長は、準確定申告も対象となっています。そのため、どうしても期日までに準確定申告するのが困難な方は、無理をして期日に間に合わせる必要はありません。ただし、申告者が仕事などで1年以上日本を離れる際に事前申告する「出国による準確定申告」は延長できません。ご注意ください。
(※2020年5月執筆時点での情報です)
まとめ
準確定申告とは、被相続人に代わって相続人等が確定申告することです。準確定申告が必要になる条件は、通常の確定申告と同じなので、亡くなった人に申告義務があるかどうかを確認する必要があります。
手続きの流れは、必要書類の用意・各相続人等に連絡を取って書類を作成・期限までに申告書を提出、の順で行います。
手続き方法や納める税額が、通常の確定申告とは変わるケースもあるので注意が必要です。
期限までに準確定申告をしなかった場合は、余計に税金を課せられる危険がありますので、期限内に申告を済ませましょう。しかし2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響で、期限が延期されています。どうしても期日までの申告が困難な場合は、無理をする必要はありません。
この記事をご覧になっているのは「今まで準確定申告をしたことがない」という方がほとんどではないでしょうか。準確定申告をするための基本的な流れは、この記事で解説した通りですが、スムーズに進まず、申告が漏れてしまったり書類の作成方法が分からなかったりといった問題も出てくるかもしれません。
つまずいた時は、ぜひ相続や税金に詳しい専門家にご相談ください。準確定申告の相談を誰に依頼すべきか悩んだらこの記事が参考になります。
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