相続税の時効は5年?7年?無申告者のペナルティについても解説
こんにちは、税理士法人ともにの佐藤まり子です。
この記事をお読みになっているのは、「相続税を申告しなければ、そのまま払わなくてもいいのでは?」
と考えている方ではないでしょうか。
そのお気持ちはとてもよくわかります。相続税も消費税も所得税も、できれば払いたくないですよね‥
しかし残念ながら、相続税を未払いのまま済ませられるほど、税金徴収のシステムは甘くはありません。
今回は、
・税務署がどうやって無申告者を発見するか
・相続税の時効期間とその変化
・相続税無申告のペナルティ
など、相続税専門の税理士に詳しく聞いて記事にしました。わかりやすく説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。
なぜ税務署は相続税の無申告をつきとめるのか
まず、税務署がどうやって相続税の申告もれをつきとめるのか?について解説します。
結論からお伝えしますね。
税務署が、相続税の発生をつきとめるための情報元は以下の2つです。
【税務署の情報元】
(1)役所からの死亡届の情報
(2)過去の納税情報
税務署は、上記の2つのリソースから、相続税が発生するであろう案件を把握しているのです。
順に解説します。
役所からの死亡届情報を元にする死亡届提出から始まり、相続についての通知が税務署から届く流れを見てみましょう。
【死亡届提出から相続の文書が税務署から届く流れ】
まず人が亡くなったら、遺族は市や区の役所に死亡届を提出します。
↓
役所は、死亡届が提出されるとその情報を税務署に報告します。
↓
報告を受けた税務署は、報告された資料の中から相続税が発生しそうな人を選別します。
↓
税務署は選別した、相続税が発生しそうな人の遺族(相続人)に対して「相続についてのお尋ね」という文書を送付します。
↓
遺族(相続人)に「相続についてのお尋ね」が届く。
これが、死亡届の情報を元に、税務署が相続税発生案件を見つけて、告知する流れです。
過去の納税情報を元にするいっぽう税務署は、納税者の過去の納税情報については、システムで管理しています。個人の財産状況を、税金面から把握しているわけです。
役所から送られた死亡情報と、過去の納税情報を照合すれば、どの人に相続税が発生しそうか、だいたい判別できます。
(1)死亡情報と(2)過去の納税情報、この2つの情報が入ってくる税務署は、相続税が発生する事案をきっちりと把握できるのです。
次に相続税の「時効」について解説します。
相続税の時効期間とは?
相続税には時効があります。相続税の時効とは、その期間を過ぎると国税徴収権が消滅し、相続税を支払う義務がなくなるという期間のことです。
相続税の時効については、以下の国税通則法に記載があります。
【国税通則法】
次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(〜中略〜)を経過した日以後においては、することができない。
出典:国税通則法 第七十条
相続税の時効までの期間は、5年と7年の2種類です。それぞれ、解説します。
善意の時効と悪意の時効
相続税の時効期間は5年と7年の2種類あります。「善意」か「悪意」かで時効期間が変わります。5年は善意の場合の時効、7年は悪意の場合の時効です。
何が善意で、何が悪意かを解説します。
善意の時効とは
相続財産の存在を知らなかったために、申告納税していなかった場合は、「善意」の時効です。
【善意の時効の例】
・はじめに1億円相当の相続財産があり、それが全てと認識して申告。
・しかし実は300万円の預金が別にあり、その存在に全く気がついていなかった。
この状況であれば、300万円の預金の相続申告をしていないことは、善意とみなされるでしょう。善意か悪意かの解釈には、申告して納税した分と、未申告分の金額の大小も影響するようです。
悪意の時効とは
相続財産があると認識していたにも関わらず、申告しない場合は、「悪意」の時効が適用されます。
【悪意の時効の例】
・相続財産として預金1,000万円と申告。
・課税される金額に満たないため、相続税を払わなかった。
・しかし実は他に10億円の現金を隠し持っており、この分を申告しなかった。
この状況では、申告時に10億円の現金の存在を認識していなかったとは考えにくいです。「悪意」とみなされる可能性が高いでしょう。
このように時効の期間は、相続人の認識と状況で変わります。
時効期間の起算日
次に、時効期間の起算日について解説します。
時効は、法定申告期限の翌日から数え始めます。相続税の法定申告期限は、相続開始日の翌日から10か月です。
つまり、時効の期限は次の式で計算できます。
相続開始日+1日+10ヶ月+5年
(善意の時効)
または
相続開始日+1日+10ヶ月+7年
(悪意の時効)
となるわけです。
具体的な日付で計算してみます。
・相続開始:2020年1月15日
↓
・法定申告期限:10か月後の2020年11月15日
↓
・善意の時効日:5年後の2025年11月15日
または
・悪意の時効日:7年後の2027年11月15日
相続開始日がわかれば、時効の期限がわかります。
相続税無申告のペナルティ
次に、相続税を申告しない人に対するペナルティについて解説します。
相続の事実を知らずに時効を迎えれば、相続税の支払い義務はなくなります。しかし相続税の時効を狙って、申告・納付を怠っていると、追徴課税や刑事罰を受ける可能性があるのです。
ここからは、相続税の申告をせず、期限内に相続税を申告・納付しなかった場合のペナルティについて解説します。
ペナルティには
・延滞税
・無申告加算税
・重加算税
の3つの税金があります。
申告・納付期限を過ぎた場合の延滞税
税金として軽い方から解説します。申告はしたけれど、法律で決まっている納付期限を過ぎても支払いを済ませていない場合は、延滞税がかかります。
延滞税(法定期限後2カ月以内)
法定期限を過ぎているが期限後2ヶ月以内であれば、「原則」として延滞税は年7.3%です。「原則」と書いたのは、平成30年1月1日から令和2年12月31日までの期間は特例があるからです。
平成30年1月1日から令和2年12月31日までの特例として
・年7.3%
・特例基準割合年2.6%+1%
のいずれか低い方を適用する というものがあります。
延滞税(法定期限後2カ月超)
法定期限を過ぎていて、しかも期限から2ヶ月以上経っている場合は、原則として、年14.6%の延滞税がかかります。この場合も特例があります。
平成30年1月1日から令和2年12月31日までの特例として
・年14.6%
・特例基準割合年8.9%+7.3%
のいずれか低い方を適用する があります。
延滞税の利率は、かなり高額に感じます。相続税は遅れずに納付したいですね。
期限内無申告の無申告加算税
期限内に相続税の申告をしない場合に、無申告加算税が課されます。
【無申告加算税】
・納付税額が50万円以下の場合:納付税額に対して15%
・納付税額が50万円超の場合:50万円を超える部分の納付税額に対して20%
相続税無申告に対しては、以上の税金が課せられます。
延滞税と比べても、無申告加算税の税率は高いです。国税は、無申告に対しては納付の遅延よりも悪質な行為と見ているのでしょう。
財産を隠した場合の重加算税
隠ぺいや偽装がある場合には、重加算税がかかります。最も重いペナルティです。
【重加算税】
本来の税額に対して40%
また、
・期限後の申告
・さかのぼって5年以内に無申告加算税か重加算税を課されている
というさらに悪質と見なされるケースでは、もっと税率が重くなります。
【さらに悪質な場合の重加算税】
本来の税額に対して50%
(参考:重加算税が課された場合は、無申告加算税は課されません。)
重加算税はペナルティの中でも最も重い税金です。重加算税が課されるかどうかは、偽装や隠ぺいの意図があったかどうかで判断されます。
重加算税や無申告加算税、延滞税の対象にならないように、相続税の申告については、財産を隠したりせずに期限内に申告しましょう。
重税を課されるリスクを冒して財産を隠さなくても、合法的に相続税額を減らすことはできます。無駄な相続税を払わないためのアドバイスは、相続専門の税理士の得意とするところです。相続税を節約したい方は、ぜひ相続の専門家の無料相談をご活用ください。
相続税時効の刑事罰の可能性
金額が大きく悪質な脱税の場合、刑事罰が課される可能性があります。起訴され裁判で有罪となると、懲役や罰金刑が科せられるかもしれません。
以下は 故意に税を免れる意思はなかったけれども、申告書を提出しなかった場合の刑事罰です。
【申告書不提出罪】
1年以下の懲役または50万円以下の罰金
故意に税を免れる意思があり、申告書を提出しなかった場合の刑事罰です。
【故意の申告書不提出によるほ脱犯】
5年以下の懲役または500万円以下の罰金
偽りその他不正の行為によって税金を免れた場合は脱税とみなされ、下記の重い罰則が定められています。
【脱税犯】
10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科
となっています。
過去には社会福祉法人への寄付を装い、約4億9千万円の相続税を脱税したとして、関係者が逮捕・起訴され、有罪が確定した事例もあります。
【相続税約4億9千万円の巨額脱税事件】
判決によると、花田被告は相続人ら5人=1審でいずれも有罪=と共謀し、平成26年9月、10億円超の遺産のうち約8億5千万円を和歌山県日高川町の社福法人に寄付したように装い、相続税を不正に免れた。
引用:巨額脱税事件、和歌山県議に有罪判決 大阪地裁 - 産経WEST
まとめ
相続税の支払いには時効があります。しかし相続が発生したのに時効になることを期待して、申告せずに放置すれば、延滞税、無申告加算税、重加算税といった、高額な税金が課されます。さらに、財産の隠ぺいや偽装などの悪質な行為があると、起訴され刑事罰が科せられることもあります。
税金徴収のシステムはよくできていて、時効による支払い義務の消失は、現実的にはないと考えてよいでしょう。追徴税額や刑事罰を考えても無申告のリスクは非常に高いです。相続税を不正に免れても、得るものは何もありません。
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