相続が発生したときの固定資産税は、誰がいつから納税者になり、どう決まるのか。また、固定資産税は誰が支払うのか。
1.固定資産税についてのルールは一つだけ
固定資産税は不動産を所有している限り、支払い続ける義務がある税金なので、不動産という大きな資産を相続したときに、未払いの固定資産税の納税通知書が見つかったり、新たに固定資産税の納税通知書が届いたりすると「これは誰の負担になるのか、誰が支払いをするのか」などの問題が出てきます。誰かが早く支払わなければと思って立て替えても、それがのちに相続人の間でもめ事になりかねません。
法律で定められたルールは、1月1日に不動産登記簿上所有者となっている人が納税義務者であるという点であって、それ以上のことは、話し合いによって決まります。
1月1日時点で所有権を持っている人のもとに、その年の5月初旬から6月初旬あたりに、固定資産税と都市計画税の納税通知書が郵送されてきますので、送られてきた納付書にしたがって納税することとなります。
仮にご自宅を所有されている被相続人が1月2日に亡くなられた場合、その年のご自宅の固定資産税を納税する義務は被相続人となります。また、秋から冬にかけて亡くなられた場合、翌年の1月1日時点で相続財産の分割について決まっていないことがほとんどです。この場合の翌年の固定資産税は、1月1日時点では相続人全員の共有財産となるため相続人全員が分割して支払う義務を負います。
2.その他のことは、話し合いで決まります
相続不動産の新所有者が決まるまでは大きく2段階に分かれます。
ひとつは、被相続人が納税者で未納付分がある場合で、被相続人が亡くなられたあと、その被相続人が支払うはずの固定資産税は、相続人間で誰が負担するか話し合いで決めます。
もうひとつは、新所有者が確定しないため共有持ち分として相続人全員が納税者となる場合で、相続財産の分割を決める遺産分割協議書に全員の署名と捺印がされるまで、新所有者が確定しないためそれまでは共有持ち分となり、相続人全員が納税者となるのが原則です。一般的には亡くなられた年の翌年の固定資産税が対象になることが多いです。
すでに分割割合がおおよそ決まっている、また同居の相続人がいる場合などは、話し合いがまとまれば割合を変えても問題ありません。
実際の納税時には、固定資産税の納付書は1枚しかないため相続人が複数名の場合は別々に納税手続きをおこなうのではなく、代表者を決めて納税します。
3.被相続人が未払いにしていた固定資産税はどうなる?
被相続人の未払い金に関しては、相続人が決まったとしても、被相続人の債務と考えることができます。
なお、遺産分割協議が調うまで被相続人の口座は凍結していてお金をおろせないため、通常は相続人が自分の財産で立替えて支払い、遺産分割協議がととのった後に精算することになります。
相続発生前の固定資産税の未払い金については、相続発生後に相続人が支払ったとしても相続税の債務控除の対象となります。固定資産税を代わりに支払った分、相続税が減額されるということになります。
納付した日付が、相続発生日以後のものであれば、たとえ期日が過ぎた納付分であったとしても債務控除の対象となります。例えば、6月に相続が発生し第1期分が未納の場合、残りの第2~4期分と合わせて被相続人が支払うべき税金であるため、第1期~4期分が債務控除の対象となります。
4.遺産分割協議中の固定資産税はどうなる?
遺産分割協議中に、相続した不動産の固定資産税を支払わなければならない場合には、相続不動産は共有の状態にありますから、固定資産税もまた、相続人が、その法定相続分に応じて支払うこととなります。遺産分割協議が長引き、その間に固定資産税が発生したというような場合です。しかし、相続人が複数いる場合、「等分に分ける」ということはなかなか難しいかもしれません。
実務上は、ケースに応じて次のように処理されています。
・相続人の代表者が立て替え、遺産分割協議において相続財産の中から支払う
・相続人の代表者が立て替え、各相続人から法定相続分に応じた負担額をもらう
・その不動産(土地・建物)の相続を予定している相続人が支払う
・相続財産管理人がいる場合は、固定資産税は遺産を維持するための経費としてみなされるため、その管理人が相続財産の中から支払う
遺産分割協議中であると、固定資産税の納税通知書自体は、故人の名義で届きますが、実際に支払うのは相続人のいずれかです。
固定資産税の納付書は、亡くなられた方であっても1月1日時点の所有者の方へ送付されます。実際には4~6月に送られてきますが、届け出をおこなうことで変更をすることも可能です。
ただし、固定資産税を支払ったからといって、その不動産を単独で相続できるわけではないことに注意が必要です。
5.不動産の相続が済んだ後の固定資産税はどうなる?
遺産分割協議が調ったとしても1月1日まで相続登記が間に合わない場合には、管轄の役所宛に「相続人代表者指定届」を提出することで、指定した相続人の方のご自宅に納付者が送られてくるようになります。
固定資産税は1月1日の所有者が1年分(4期分)を支払いますが、遺産分割協議が成立し、不動産の相続が済んだ後であれば、その不動産を相続した相続人が、固定資産税を負担するのが公平です。
税負担を明らかにするために、「不動産を相続した相続人が払う」ことを、遺産分割協議書で明確に定めておけば相続人間のトラブルを回避できます。
6.その他の注意点
6-1.名義変更
自宅の所有者が亡くなられた祖父様のままなど、不動産登記の情報が何世代にも渡って変更されていないケースも多くあります。不動産の所有者が変わったら登記情報を変更するルールではありますが、手数料等がかかることと現状は罰則が無いことから不動産の名義変更をしないケースが増えています。
相続登記の回数を減らすことをメリットと感じられるかもしれませんが、それ以上のリスクがあるかもしれません。
祖父様の相続人であった父様が亡くなられ、祖父様の相続関係が変わった(いわゆる数次相続)場合、今まで全然連絡を取っていなかった親族と相続の話をする必要が生じ、より遺産分割協議に時間がかかったり、手続きの際に必要となる戸籍謄本等が増えたり、思ってもいなかったトラブルに発展してしまうリスクもあります。
6-2.延滞金
現実には、遺産分割協議が円満に進まず、固定資産税が支払われずに放置されてしまう場合も少なくありません。固定資産税を支払わないと「滞納」の状態になり、その期間に応じた延滞金が発生します。
固定資産税の延滞金の利率は、①納期限の翌日から1か月以内:年2.5%、②納期限の翌日から1か月超:年8.8%です。
固定資産税を納付しないまま放置し続けると、市区町村から催告状、督促状が届いた後、それでも放置し続けた場合、最悪のケースではその不動産が差し押さえられてしまいます。
6-3.相続放棄
1月1日に被相続人所有であった不動産を、その後に相続が発生したけれども、相続放棄をしたケースを想定してみます。この場合、相続放棄の手続は、相続をした時点にさかのぼって効果を生じ、最初から相続をしなかったものとして取り扱われます。その結果、未納の固定資産税は借金等と同様に扱われますので、相続放棄をすることで「もともと相続人では無かった」となれば支払い義務もありません。
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