タワマン節税の仕組み・メリット・デメリットを相続専門税理士が解説
「タワーマンションの購入で相続税がガクンと減らせる」
「タワマン購入は相続対策になる」
こんなことを言う人がいます。実際コロナ禍にも関わらず、2020年〜2021年のタワーマンションの販売戸数は落ちず、人気があります。
やはりこの情報は事実なのでしょうか?
結論から言って「相続税の節税目的」でのタワーマンション購入はおすすめしません。理由を本文でご紹介します。
この記事では、タワマン節税のしくみとメリット、そして実行した場合のリスクを相続専門税理士の視点で解説いたします。相続税の対策で失敗したくない方は、ぜひご一読ください。
まずはタワマン節税とはどんなものなのかを解説しましょう。
1.タワーマンション節税のしくみ
タワーマンションを購入すると節税になる、と言われる仕組みを解説します。
1-1.タワーマンション上層階と下層階の市場価格差
タワーマンションは、高層階と低層階で販売価格が異なります。高層階の方が眺望がよく、資産価値が高いなどの理由から、高層階は低層階より高い価格で取引されます。
1-2.不動産資産の相続税課税のしくみ
相続した不動産にかかる相続税を計算するとき、元になるのが不動産評価額です。不動産評価額は、土地の評価額と、建物の評価額から構成されます。それぞれの評価額は以下のように計算されます。
・土地‥‥路線価を元に算出
・建物‥‥固定資産税評価額を元に算出
マンションの場合は、土地も建物も、そのマンション全体が同じ価値であるとして評価算定されます。すると同じ1つのマンションの場合は、高層階も低層階も税評価としては、同じ金額で算定されるわけです。
課税評価額と市場取引額に開きが生まれるわけで、この価格のズレを利用するのがタワーマンション節税です。
つまり高額な高層階も割安な低層階も、相続税や固定資産税の税金は同じ価格となり、相対的に高層階であるほど、税金の面ではお得になる、というわけです。
これがタワーマンションを活用して節税するしくみとなります。
1-3.小規模宅地等の特例活用でさらに大きく節税できる
タワーマンションを相続するときに、「小規模宅地等の特例」を活用できると、さらに税金を減らすことができます。
小規模宅地等の特例は、宅地を相続する時に条件を満たすと使える特例です。住宅として使用していた場合は「居住用宅地等」に該当し、広さが330㎡の限度面積以下であれば80%の減額が適用可能です。
1-4.タワマンで小規模宅地等の特例を活用するには
タワーマンションの相続で、小規模宅地等の特例を活用するためには、マンション側が条件を満たしている他に、相続人側も条件を満たす必要があります。
すなわち、相続人が
・被相続人の配偶者
・被相続人の同居親族
・被相続人と別居の「家なき子」
の場合に適用可能となります。小規模宅地等の特例についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2.タワーマンション節税のメリット
タワーマンション節税のメリットは、節税のしくみの項目でご紹介しました通り、市場価格と課税評価額のズレに着目して、税金面の節約ができることにあります。
ただし、このメリットは「タワーマンション」が珍しい時代には安全で有効な方法でした。タワーマンションが珍しくなくなった令和時代には、タワマン活用による節税は両手を挙げて推薦できるものではなくなりました。
3.タワーマンション節税のリスク
タワマン購入で、相続税の節税を試みた場合のリスクをご紹介します。
タワマン節税リスク事例 第1段階
1.ひとり暮らしの高齢の親がタワーマンションの高層階を購入。購入価格は3億円。
2.購入後1年程度で親が体調を崩し介護付き老人ホームに入居。
3.マンションには誰も住まなくなる。
4.老人ホームでの介護の末に親が亡くなる。
5.今は住む人がいないタワーマンションを相続。
6.タワーマンションを路線価と固定資産税評価額を元に数千万円と評価。
7.数千万円の評価額を元に相続税を算出し、申告・納税。 8.その後マンションを2億8千万円で売却。
この状況で、節税と資産運用ができたと喜んでいると、税務署から次のような連絡が来るかもしれません。
タワマン節税リスク事例 第2段階
1.税務署の要求は「申告に誤りがあるので修正申告するように」という内容。
2.税務署の要求を断ると更正処分が入る。
更正処分とは、税務署からの申告内容に対する抗議です。更正処分の内容は以下のようなものでした。
タワマン節税リスク事例 第3段階
更正処分の内容
・評価額数千万での申告は認められない。
・取得価格の3億円を不動産評価額として相続税申告するように。
法律に則って申告したのですから、遺族は税務署の要求を受け入れられず、裁判所に不服申し立てをします。
タワマン節税リスク事例 第4段階
更正処分の内容
・裁判の結果、遺族の主張は認められなかった。
・税務署の主張が通った。
この事例では、税務署と裁判所がいずれも「節税の意図がある」と判断しため、最終的に遺族の主張が退けられました。
タワーマンションでの居住期間がもっと長ければ、税務署や裁判所にとって「節税の意図は感じない」状況になったかもしれません。しかし明確な線引きはないのです。富裕層の税金逃れに対しては国税当局は厳しい態度で臨みます。
4.タワーマンション節税の未来
2017年の税制改正で、高層マンションの固定資産税が変更され、タワマン節税が難しくなっています。変更の要点はこちらです。
4.1税制変更の対象となるマンション物件
税制変更の対象となったマンション物件の詳細を解説します。
4-1-1.固定資産税の変更対象
・2017年1月2日以降に新築
・高さ60メートル超(概ね20階建て以上)
・居住用超高層マンション
4-1-2.不動産取得税の変更対象
・2017年4月1日以降に新築
・高さ60メートル超(概ね20階建て以上)
・居住用超高層マンション
4-1-3.階層による税率変更の割合
・25階から上の階は1階ごとに0.25%増税
・25階から下の階は1階ごとに0.25%減税
高層階と低層階の固定資産税と市場価格のズレが是正される方向に法改正されたわけです。今後も、社会の変化に法律が対応できていないなら、現実にあわせて修正されることが予想されます。
注意点:
ただし、この改正は固定資産税の算定式で対処したものです。固定資産税評価額自体には、変更はないです。そのため、固定資産税評価額を建物の評価額の根拠とする相続税や贈与税の課税には影響はありません。
まとめ
タワーマンション節税の仕組みをご紹介しました。仕組みだけでなく、タワマン節税のメリットとリスクも解説しています。順番に解説しましたのでご理解いただけたかと思います。
しかし相続専門の税理士としてタワーマンションを使った節税は全面的にはおすすめできません。
とはいえまったく旨味がなくなったとも言えないです。
2018年以前に建てられたマンションは2017年の法改正の影響を受けないからです。高層階も低層階も同じ固定資産税評価額になります。つまり「タワーマンション」と一口に言っても条件は全物件一律ではありません。
タワーマンション投資で節税したいなら、最新情報の収集と学習は不可欠です。勉強が苦にならず、充分な余裕資金をお持ちなら、試してみるのも一興です。
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