不動産鑑定評価書の読み方を解説!マスターすれば不動産の資産価値がわかる
不動産鑑定評価書を見るときのポイントを解説します。不動産鑑定評価書は、不動産の価値を把握したいときに、頼りになる専門的な文書です。しかし、慣れていないと「見方がよくわからない‥」と、読むのが嫌になるかもしれません。
ただ不動産鑑定評価書は、裁判など公的な場でも尊重される正式な文書です。読み方を理解できれば、不動産取引において大きなメリットになります。
そこで、この記事では、現役の税理士・不動産鑑定士の監修のもと、「不動産鑑定評価書の読み方」をわかりやすく解説しました。不動産の相続や売買をする方には、非常に有益な情報ですので、ぜひ最後までお読みください。
- 不動産鑑定評価とは
- 不動産鑑定評価書サンプル
- 不動産鑑定評価書に記載される事項とその読み解き方
- 記載事項1 鑑定評価額・価格・賃料の種類
- 記載事項2 鑑定評価の条件
- 記載事項3 対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量等及び対象不動産に係る権利の種類
- 記載事項4 対象不動産の確認に関する事項
- 記載事項5 鑑定評価の依頼目的及び依頼目的に対応した条件と価格又は賃料の種類との関連
- 記載事項6 価格時点及び鑑定評価を行った年月日
- 記載事項7 鑑定評価額の決定の理由の要旨
- 記載事項8 鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び調査の範囲
- 記載事項9 関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者に係る利害関係等
- 記載事項10 関与不動産鑑定士の氏名
- 記載事項11 依頼者及び提出先等の氏名又は名称
- 記載事項12 鑑定評価額の公表の有無等について確認した内容
- 不動産鑑定評価書で読み解くべき4つの重要ポイント
- 不動産鑑定評価書が必要なケース
- まとめ
不動産鑑定評価とは
はじめに、不動産鑑定評価そのものについて解説します。不動産鑑定評価の定義は、法律で決まっています。不動産鑑定評価とは、「不動産鑑定士が、専門家として不動産の評価額を決定・表示すること」です。「不動産鑑定士が評価する」ことが重要です。
不動産鑑定評価と混同されやすいものに、不動産査定があります。(不動産鑑定評価と不動産査定の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。)
不動産査定は、不動産仲介業者が集客のために無料サービスで提供することが多いです。このため広告でよく見かけます。不動産査定は不動産の売り出し価格を決めるための参考評価額のことであり、不動産鑑定評価とは根本的に異なるものです。
不動産鑑定評価書サンプル
はじめての方にも理解しやすいように、以下に不動産鑑定評価書のサンプルを掲載しました。ぜひ御覧ください。
【不動産鑑定評価書サンプル】
それではサンプルとあわせて、不動産鑑定評価書の記載事項とその読み方を見ていきましょう。
不動産鑑定評価書に記載される事項とその読み解き方
不動産鑑定評価書に必ず記載せねばならない事項が法律で決められています。
以下12項目がその「必ず記載すべき事項」です。
【不動産鑑定評価書に記載する諸事項】
- 1 鑑定評価額及び価格又は賃料の種類
- 2 鑑定評価の条件
- 3 対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量等及び対象不動産に係る権利の種類
- 4 対象不動産の確認に関する事項
- 5 鑑定評価の依頼目的及び依頼目的に対応した条件と価格又は賃料の種類との関連
- 6 価格時点及び鑑定評価を行った年月日
- 7 鑑定評価額の決定の理由の要旨
- 8 鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び調査の範囲
- 9 関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者に係る利害関係等
- 10 関与不動産鑑定士の氏名
- 11 依頼者及び提出先等の氏名又は名称
- 12 鑑定評価額の公表の有無等について確認した内容
出典引用:不動産鑑定評価基準 総論 第9章 第2節
記載事項※
※不動産鑑定評価書に記載する項目や作成指針については、『不動産鑑定評価基準』という法律文書で規定されています。
つづいてこの12個の必須記載事項の意味と、読み方について解説していきます。
記載事項1 鑑定評価額・価格・賃料の種類
まずは「鑑定評価額・価格・賃料の種類」についてです。
不動産の取引には販売と賃貸があります。不動産鑑定評価書はどちらにも対応します。
・販売する場合 → 価格
・賃貸する場合 → 賃料
として、鑑定評価額を記載します。
鑑定評価額
鑑定評価額とは、不動産鑑定士が調査・分析した上で決定する「対象不動産の評価額」のことです。
以下は、鑑定評価額の記載例です。
鑑定評価は、いわば、不動産鑑定評価の「結論」と言えます。
価格の種類
価格の種類とは、不動産鑑定評価で出す「対象不動産の価格または賃料」の種類です。
不動産を販売する場合は価格、不動産を賃貸する場合は賃料となります。
価格の種類は、次のように定義されています。
種類 | 『不動産鑑定評価基準』での定義 | 例示等 |
---|---|---|
正常価格 | 市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場(*)で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格。 (*)売り急ぎや買い進みなどの特別の状況になく、自由に参入・退出でき、対象不動産が相当の期間広く公開されている市場 | 広く一般に公開された不動産市場で形成される、市場参加者が妥当と考える価格です。 |
限定価格 | 市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合または不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の元において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格。 | 借地権者が、自分の所有する家屋の底地である借地を地主から購入する際に求める底地の価格などです。 |
特定価格 | 市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格。 | 民事再生法において、不動産の早期売却を進めるために行う鑑定評価で求める価格などです。 |
特殊価格 | 文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用状況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格。 | 文化財の指定を受けた建造物や神社・寺の保存等に主眼を置く場合に求める価格などです。 |
上記4価格のうち「特殊価格」は市場性を持たない不動産が対象となります。価格種類の中では一般的な市場取引である「正常価格」の案件が多いです。
以下は、価格の種類の記載例です。
賃料の種類
つづいて賃料の種類を解説します。賃貸不動産の場合、価格の種類は賃料となります。
種類 | 定義 | 例示等 |
---|---|---|
正常賃料 | 正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)。 | 広く一般に開かれた市場の下で、契約する当事者において妥当と認識される新規賃料です。 |
限定賃料 | 限定価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料) | 隣地である不動産を併合して使用するために新たに締結する賃貸借契約における新規賃料などです。 |
継続賃料 | 不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料。 | 既に成立している賃貸借契約を更新・改定する際の賃料などがあたります。 |
新規に契約する場合は正常賃料、契約継続の場合は継続賃料、隣地を併合して新たに契約する場合は限定賃料となります。
記載事項2 鑑定評価の条件
鑑定評価の条件とは、鑑定の対象となる不動産を確定するための条件(確定条件)や、依頼目的に応じた想定条件(要因条件)を指します。
以下は、鑑定評価の条件の記載例です。
条件の具体例としては
- 対象不動産を現状そのままとする
- 実際には土地の上に家屋があるが、更地であると想定する
- 角地だが、中間画地と想定する
- 工事中の最寄駅が、営業中であると想定する
といったように、「今見えている状態で考える」場合と、「今見えている実際の不動産の姿とは異なる状態を想定する」ものがあります。今見えている実際の不動産の姿とは異なる状態を想定したものが想定条件です。
確定または想定した条件は、その妥当性の根拠とともに記載しなければなりません。鑑定評価条件は、不動産鑑定士が勝手に決めるのではなく、依頼者と合意した上で決定します。
記載事項3 対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量等及び対象不動産に係る権利の種類
不動産鑑定評価書には、対象の不動産を特定するための、以下の情報を必ず記載します。
- 所在
- 地番
- 地目
- 家屋番号
- 構造
- 用途
- 数量等
- 対象不動産に係る権利の種類
以下は、対象不動産の情報の記載例です。
それでは対象不動産の表示の各項目について、順番に解説します。
所在・地番
「所在」「地番」は、不動産登記簿に記載されている、不動産の所在地のことです。
所在、地番は1筆の土地ごとに定められており、住所(住居表示)と一致しないこともあるのでご注意ください。
地目
「地目(ちもく)」とは、不動産登記簿に記載されている、土地の種類のことです。
- 田
- 畑
- 宅地
- 山林
など、地目は23種類あります。
登記簿上は「畑」だが現況は「宅地」ということもあります。したがって実際に現地調査をしてから鑑定評価することは、非常に重要性です。
家屋番号
家屋番号とは、建物に対して振られる固有の番号です。
地番が土地に対して振られる番号であるのに対して、建物には家屋番号が振られます。家屋番号は法務局で不動産登記される建物に対して付けられます。
構造
構造とは建物の構造のことです。構造には以下の種類があります。
- ・構成材料(木造、鉄筋コンクリート造など)
- ・屋根の種類(かわらぶき、スレートぶきなど)
- ・階数(平屋、二階建など)
以下は、建物の構造の記載例です。
用途
用途とは、建物の用途のことです。建物の用途は、不動産登記法で37種類が定められています。ただ建物の用途は多岐にわたります。挙げられた種類に収まらない場合は、適当に定めてもよいことになっています。
代表的な用途としては
- 居宅
- 店舗
- 事務所
などがあります。
数量
「数量」は、不動産の面積のことです。数量には登記簿上の数値(及び実測値)が示されます。
【参考情報】
実際の不動産鑑定評価書においては、「所在」「地番」「地目」「数量」は、「対象不動産の表示」という項目に記載されます。
権利の種類
不動産の「権利の種類」とは、民法で定められている所有権・借地権・区分所有権などの、不動産に関する権利のことです。
不動産鑑定評価書では、「権利の種類」とともに「種別」「類型」をあわせて記載します。
種別とは、土地の用途に応じた分類のことです。種別には以下のものがあります。
- 宅地
- 農地
- 林地
類型とは、不動産の利用状況や権利態様による分類のことです。類型には以下のものがあります。
- 更地
- 自用の建物及びその敷地
以下は権利の種類の記載例です。
記載事項4 対象不動産の確認に関する事項
「対象不動産の確認」には、鑑定評価対象の不動産が存在していることを実際に調査確認した内容を記載します。
対象不動産の確認は以下の2つの側面から行います。
- ・物的確認
- ・権利の態様の確認
それぞれ順に解説します。
物的確認
物的確認について解説します。対象不動産の物的確認をするためには、まず実地調査を行わねばなりません。実地調査を済ませて存在を確かめたら、結果を以下3点の書類と照合します。
- ・不動産事項証明書
- ・公図
- ・建物図面等の確認資料
照合して問題がなければ、物的確認は完了です。
権利の態様の確認
権利の態様の確認とは、対象不動産に係る権利関係を明らかにすることです。権利の態様を確認するために、権利の存否と内容を、確認資料と照合します。
記載事項5 鑑定評価の依頼目的及び依頼目的に対応した条件と価格又は賃料の種類との関連
不動産鑑定評価書には、鑑定の依頼目的を記載します。
鑑定評価の依頼目的
鑑定評価の依頼目的で代表的なものとして以下が挙げられます。
・売買の参考
・相続財産の評価
・融資担保としての評価
以下が、 鑑定評価の依頼目的の記載例です。
鑑定評価の依頼目的に対応した条件
鑑定評価の依頼目的に対応した条件とは、対象の不動産を確定するための条件のことです。(記載事項2 鑑定評価の条件で詳しく解説していますので、ご参照ください。)
価格または賃料の種類
価格または賃料の種類については、記載事項1の価格・賃料の種類で解説していますので、ご参照ください。
記載事項6 価格時点及び鑑定評価を行った年月日
価格時点とは、「鑑定評価額を決定するための基準とした日」のことです。不動産の評価額とは固定されたものではありません。状況や時間の経過によって変動するため、どの時点で評価したものかを明確にする必要があります。
以下が、鑑定評価を行った年月日の記載例です。
記載事項7 鑑定評価額の決定の理由の要旨
記載事項には、鑑定評価額の決定理由の要旨として、以下の内容を記載しなければなりません。
【鑑定評価額の決定理由の要旨の内容】
・価格形成要因の分析
・最有効使用の判定
・鑑定評価の手法
・試算結果及びその調整
鑑定評価額の決定の理由の要旨は、不動産鑑定評価書の肝となる大事な部分です。つづいて要旨の各項目について解説します。
価格形成要因の分析
価格を形成する要因を分析して記載します。価格を形成する要因としては、以下の3つがあります。
- ・一般的要因
- ・地域要因
- ・個別的要因
最有効使用の判定
最有効使用とは、その不動産の効用が最も発揮される使用方法のことです。
以下は、最有効使用の記載例です。
最有効使用には前提があります。それは、「良識と通常の使用能力がある人が、最も合理的で合法的な使い方をした場合に最善の使用方法である」ということ。
不動産の使用方法は非常に多様なので、前提を決めないと具体的な数字に落とし込めません。前提条件として使う人と使い方を絞りこみ、不動産の使用方法を「最有効使用」とすることで、評価額が計算できます。
鑑定評価の手法
鑑定評価の手法には複数の種類があります。また不動産タイプにより向き不向きもあります。
代表的な鑑定評価の手法は、以下の3つです。
(1)取引事例比較法取引事例比較法は、評価対象の不動産に近い物件の取引事例の価格を元にする手法です。
・対象物件に固有の要因
・地域要因
を元に、
・マーケット状況等を踏まえた補正
を加えて適正な価格を導き出す方法となります。
取引事例比較法は、過去に類似の取引事例がある場合に使える方法です。特にマンションや土地の鑑定評価方法として、広く利用されています。しかし類似事例がない場合や、類似事例があったとしても取引時点から長時間が経過して、比較対象として適切でない場合には使えません。
(2)収益還元法収益還元法は、評価対象の不動産が将来生み出すと期待される収益(対象物件を賃貸した場合に期待される賃料収益など)に着目して、対象不動産の適正な評価額(収益価格)を導き出す鑑定評価方法です。
主に賃貸アパートや賃貸マンションなどの、投資用不動産について投資判断を行う際に、用います。
(3)原価法原価法は、対象不動産を再調達した際の原価(再調達価格)を計算し、築年数などによる価値低下分の修正を加えて、評価額を導き出す方法です。
原価法は、一戸建てなどの建物の評価を行う際に用いられる鑑定評価方法です。
以下は、鑑定評価の手法の記載例です。
対象の不動産に最も適した手法を選んで実践するのですが、記載例では原価法と収益還元法が選択されています。
鑑定評価の手法については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
試算結果及びその調整
選択した鑑定評価手法により不動産の試算価格が算出されますが、その一度算出した試算価格を再吟味することで、さらに精度を高まります。これが試算結果及びその調整です。
記載事項8 鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び調査の範囲
資料収集や調査の過程で、明確にできなかった項目を、鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び調査の範囲として記載します。
記載事項9 関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者に係る利害関係等
不動産鑑定評価書を作成した不動産鑑定士と利害関係者の関係性を記載します。
考えられる利害関係としては、以下があります。
①不動産鑑定士と対象不動産の所有者
(不動産鑑定士が所属する不動産鑑定業者を含む。)
②依頼者と不動産鑑定士
(不動産鑑定士が所属する不動産鑑定業者を含む。)
③不動産鑑定評価書の提示・提出先と不動産鑑定士
(不動産鑑定士が所属する不動産鑑定業者を含む。)
④証券化対象不動産の調査の場合の依頼者と証券化関係者
以下は利害関係の記載例です。
記載事項10 関与不動産鑑定士の氏名
不動産鑑定評価に関与した、全ての不動産鑑定士の氏名が記載されます。
記載事項11 依頼者及び提出先等の氏名又は名称
不動産鑑定評価の依頼者と提出先は、同一の場合もあれば、異なる場合もあります。依頼者及び提出先等の氏名又は名称は一般的には表紙に表記されます。
記載事項12 鑑定評価額の公表の有無等について確認した内容
依頼者と不動産鑑定士の間で鑑定評価額の公表について確認した内容が記載されます。
不動産鑑定評価書で読み解くべき4つの重要ポイント
前述のとおり、不動産鑑定評価書には、多くの情報が記載されます。全体で数10ページという大きなボリュームになることもあります。
本来は全てのページに目を通して欲しいです。しかし、そうした時間がとれない方のために、特に不動産鑑定評価書で注意して読むべきポイントをお伝えします。
注目すべきポイントは、以下4つです。
【不動産鑑定評価書で特に見るべき4つのポイント】
1.鑑定評価の条件
2.対象不動産の確認
3.価格時点
4.鑑定評価額の決定の理由の要旨
順番に解説します。
不動産鑑定評価書4つの重要ポイントではじめに確認すること
まずはじめに、以下を確認してください。
- ・鑑定評価の条件
- ・対象不動産の確認
- ・価格時点
以上の3項目については、「鑑定依頼に合致したものとなっているかどうか」を確認しましょう。
評価額決定理由の要旨を確認
次に、以下の内容を見ます。
・鑑定評価額決定の理由の要旨
については、「依頼目的に対して説得力を持つ内容であるかどうか」を見ます。
4ポイントの中で、特に重要なのが、この鑑定評価決定の理由の要旨です。なぜなら、不動産鑑定評価の金額が示されたとしても、評価に至った過程や理由に納得できなければ、依頼目的が達成できないからです。
また不動産鑑定評価書は「依頼者が読んで理解できる」ことも大事です。もし、実際に読んでみてわからないことがあるなら、不動産鑑定士に説明を求めて不明点をつぶしましょう。
「鑑定評価決定の理由の要旨」では、不動産鑑定士が、どのようにして評価額の決定に至ったかの「評価の過程」を以下の流れで記載します。
評価の根拠についても流れの中で示されますので、ここはがんばって理解しましょう。
【不動産鑑定評価の流れ】
①価格形成要因の分析
↓
②最有効使用の判定
↓
③鑑定評価の手法
↓
④試算結果及びその調整(鑑定評価額の算定及び調整)
まず①で、対象不動産の価格形成要因を分析し、次に②で、最有効使用の判定結果を記載します。
次に③で、判定された最有効使用を前提に、対象不動産にとって最適な鑑定評価の手法を提示します。
導き出した評価試算額に、④の試算結果及びその調整で、不動産鑑定士の専門的見地から再度調整を加えます。
①〜④の結果が最終的な評価額として記載され、鑑定評価決定の理由で評価額の妥当性が解説される、というのが不動産鑑定評価書で理解すべき重要なポイントです。
不動産鑑定評価書が必要なケース
つづいて不動産鑑定評価書が必要とされ、大きな効力を発揮する場面を解説します。
不動産鑑定評価の定義は「不動産鑑定評価について国家資格を持つ専門家が、適正な評価額を法的評価基準に従って決定・表示すること」です。つまり不動産鑑定評価書は、適正な評価額が公的に求められる場合に必要とされます。
具体的には、以下の場合に必要とされます。
【不動産の適正な評価額が公的に求められる場合とは】
・不動産に関連する裁判で、裁判所に対して適正な評価額を提示する
・相続税や贈与税の申告で、税務署に不動産の適正価格の証明として提示する
・金融機関に対して、適正な担保価値の証明として提示する
・対象不動産の評価額を示すために提示する
・役員・同族法人間の利益相反行為となる不動産売買の実行で、議事録作成のための適正時価を算定する
など
代表的な場面として、相続税申告や、不動産を担保に融資を受ける場合などに、不動産鑑定評価書は大きな力を発揮すると言えます。
まとめ
不動産鑑定評価書に記載される内容と、その読み方について解説しました。
不動産鑑定評価書は、専門的で公的な文書です。不動産についての裁判や、不動産を相続するとき、不動産を担保に融資を受けるときなど、不動産とお金に関わる重要な決定をする場面で、不動産鑑定評価書は効力を発揮します。大事な決断の際に後悔しないよう、ぜひ不動産鑑定評価書をご活用いただければ嬉しいです。
ただし不動産鑑定評価は、不動産鑑定士という国家資格を持つ専門家が作成する専門的な文書のため、作成には相応の費用と時間がかかります。(不動産鑑定評価の費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。)
不動産鑑定評価書の作成を依頼可能な、信頼できる不動産鑑定士を見つけるには、ぜひ「紹介」をご活用ください。普段からつきあいのある弁護士や税理士から紹介を受けるのが、おすすめの不動産鑑定士の見つけ方です。
もし、弁護士や税理士にお知り合いがいない場合は、ぜひ、わたくしども『相続専門の税理士法人ともに』へご相談ください。初回のご相談は無料ですし、信頼できる不動産鑑定士をご紹介いたします。
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